こんにちは。三信ブログ部のアオノ🌱です。
工場や店舗、電力設備のDXでは、センサーやカメラを設置できても、データを収集するための通信回線をどう確保するかが課題になることがあります。
LANケーブルを新たに敷設するには工事が必要です。また、金属設備の多い工場や地下設備などでは、無線通信が安定しないケースもあります。
こうした場所で活用が期待されるのが、既設配線を通信回線として利用できる「Nessum」です。
今回はNessum対応機器を実際に接続し、通信がどのように立ち上がるのか、どの程度の速度で通信できるのかを確認しました。
■ Nessumとは
Nessumは、従来「HD-PLC」と呼ばれていた技術を発展させた通信規格です。
電力線だけでなく、ツイストペア線や同軸ケーブルなど、既設の配線を利用してデータ通信を行えることが特徴です。
主な特徴は次の3点です。
- 既設配線を通信回線として活用できる
- マルチホップにより通信範囲を広げられる
- 無線通信が難しい場所でも利用を検討できる
そのため、次のような用途が想定されます。
- 電力設備や屋外設備の遠隔監視
- 工場内の設備・センサーデータ収集
- 店舗内のカメラ、空調、照明、サイネージの接続
ただし、通信性能は配線の種類、長さ、分岐、ノイズなどによって変わります。
そこで今回は、実機を使って基本的な動作と通信性能を確認しました。
■ 今回使用した機器
今回の検証では、Nessumのアダプタを2台用意し、それぞれのEthernetポートにPCやネットワーク機器を接続しました。

今回使用したNessumアダプタ。
LANだけでなく、RS485、DI/DOも制御できます。
アダプタのMaster(親機)もTerminal(子機)も同一機種を使い、 スライドスイッチで役割を変えています。
■ 今回の実験環境
実験は2階建ての一般住宅で行いました。
2階のルーター付近にNessumアダプタのMasterを設置し、同じ部屋、隣の部屋、1階の2か所にTerminalを接続しました。
各アダプタはLANケーブルではなく、建物内に敷設されている電力線を経由して通信しています。
特に工事はしておらず、コンセントに接続しているだけです。
特に今回のポイントは、単純に同じ電源タップ内で通信させたのではなく、次の条件を含んでいることです。
- 異なる部屋のコンセント間
- 1階と2階の間
- 分電盤を経由する異なる電源回路
- 実際の建物内に敷設された電力線
実際の導入環境に近い条件で、通信速度を確認しました。
■ 今回の実験結果
アダプタの電源を入れると、数秒程度でMasterとTerminal間の通信が確立しました。複雑な配線作業や細かな設定を行うことなく、短時間でネットワークを立ち上げることができました。
実際に使ってみると、一般的なネットワーク機器を設置する感覚に近く、Nessumに関する専門的な知識がなくても簡単に接続できる印象でした。
特に、既設設備への後付けを想定した場合、配線工事を抑えられるだけでなく、現場での設置や立ち上げにかかる時間を短縮できる点もメリットだと感じました。
通信速度を測定
各場所でインターネットの通信速度を測定した結果は、次のとおりです。

Masterに近い2階では、下り・上りともに約30Mbps前後の速度が出ました。
一方、分電盤を経由して1階へ通信した場合は、設置場所によって約3~9Mbpsまで速度が低下しました。
同じ建物内でも、階や部屋によって通信速度に差が出る結果となりました。
分電盤をまたいでも通信できた
今回の実験で最も確認したかったのは、分電盤で回路が分かれているコンセント間でも通信できるかという点です。
結果として、2階に設置したMasterから、分電盤を経由した1階のTerminalとも通信できました。
ただし、1階の2か所でも速度には差がありました。
これは、Masterからの物理的な距離だけでなく、電力線の配線経路、回路の分岐、接続されている電気機器、配線上のノイズなどが通信品質に影響した可能性があります。
そのため、Nessumを導入する際は、単純な直線距離だけで通信性能を判断せず、実際に使用するコンセントや配線環境で評価する必要があります。
YouTube動画も再生できた
最も通信速度が低かった場所では、下り約3Mbpsという結果でした。
それでも、今回の環境ではYouTube動画を実際に再生できました。
また、次のような一般的なIoT用途で扱うデータ量を考えると、今回確認した通信速度は十分に活用を検討できる水準です。
- 温度、湿度、電力などのセンサーデータ収集
- 設備の運転状態や異常情報の取得
- 空調、照明、冷蔵設備などの遠隔監視
- PLCやIoTゲートウェイからのデータ送信
- 定期的な静止画の送信
ただし、複数台の監視カメラ映像を常時送信する用途などでは、通信速度だけでなく、速度の変動、遅延、パケットロスについても追加評価が必要です。
■ 実機を動かして分かったこと
今回の実験では、既設の電力線とコンセントを利用し、異なる部屋や階をまたいでIP通信できることを確認しました。
- アダプタを接続してから数秒程度で通信が確立した
- 複雑な設定を行わず、簡単にネットワークを立ち上げられた
- 新たなLAN配線を行わずに通信できた
- 分電盤をまたいだ異なる回路でも接続できた
- 同一階では約30Mbps前後の速度が出た
- 1階では約3~9Mbpsとなり、場所による差が見られた
- 最も速度が低い場所でもYouTube動画を再生できた
- センサーデータ収集などのIoT用途に活用できる可能性を確認できた
一方で、コンセントの場所によって通信速度が大きく変化することも分かりました。
■ 分電盤をまたいだ際の速度低下対策
コンセントの場所によって通信速度が大きく変化したことについて。
今回は実験していませんが、中継器を配置することで、改善可能な見込みです。

■ 電力設備・工場・店舗での活用可能性
今回の結果から、Nessumは特にLAN配線の追加が難しい現場で有効な選択肢になると考えられます。
電力設備では、受変電設備や屋外設備に設置したセンサーのデータ収集、工場では既設設備の後付けIoT化、店舗では空調・照明・冷蔵設備・サイネージなどの遠隔監視への活用が考えられます。
Nessum WIREは、電力線以外にも制御線、同軸ケーブル、電話線などの既設配線を利用できるため、現場に残されている配線を活用して通信経路を構築できる可能性があります。
■ まとめ
今回は、Nessumの実機を2階建ての建物内で動作させ、既設の電力線を利用した通信速度を確認しました。
分電盤をまたいだ1階と2階の間では通信速度が低下したものの、すべての測定場所で通信でき、YouTube動画も再生できました。
センサーデータや設備状態を収集する一般的なIoT用途であれば、十分に活用を検討できる結果です。
一方で、通信速度はコンセントの場所によって大きく異なりました。実際の現場へ導入する際には、使用予定の配線やコンセントに実機を接続し、必要な通信性能を確保できるか事前に確認することが重要です。
Nessumを利用した通信評価や、既設設備へのIoT導入をご検討の場合は、「お問い合わせフォーム」からご相談ください。








