IoTに最適!LPWA導入で電池寿命10年・数10km通信が実現できる7つの理由とは

「IoT導入したいが通信の電力消費やコストが気になる」

「広い敷地にセンサーを置きたいけど通信が届くか不安」

そんな課題を解決する通信技術が「LPWA(Low Power Wide Area)」です。

本記事では「LPWAの利点」を7つの視点から具体的に解説し、導入事例や注意点、選び方も紹介。あなたの業務に最適な活用方法が分かります。

目次

1. そもそもLPWAとは?──仕組みと特徴を簡単におさらい

1.1 LPWA(Low Power Wide Area)とは

LPWA(Low Power Wide Area)とは、極めて低消費電力でありながら、広範囲への無線通信が可能なIoT(モノのインターネット)向け通信規格です。数キロメートルから十数キロメートルの通信距離をカバーし、電池交換なしで長期間動作させることができるのが最大の特徴です。主にセンサーや計測器など、少量のデータを長期かつ安定して送信する用途に適しています。

例えば、農業や社会インフラの遠隔監視、物流のトラッキング、スマートメーターなど、広範囲に点在する多くのデバイスを効率良く接続するシーンで活用が進んでいます。

1.2 Wi-Fi・セルラー通信との違い

LPWAはWi-FiやLTEなどの従来の無線通信と比較すると、消費電力や通信範囲で大きな違いがあります。以下の表に主要な違いをまとめます。

項目LPWAWi-Fiセルラー(4G/LTE)
通信距離数km~十数km数十m~100m程度数km~広域
消費電力非常に低い高い高い
データ転送速度低速(bps~kbps)高速(Mbps)高速(Mbps)
主な用途IoTセンサー、遠隔監視インターネット、大容量通信スマホ・音声・動画通信
運用コスト非常に低コスト家庭用ルーター程度通信キャリア契約が必要

このように、LPWAは「消費電力を抑えつつ、離れた場所でも通信ができる」ことを強みに、小さなデータを効率よく遠隔地から送受信したいシーンで利用価値が高まっています。

1.3 主なLPWAの規格(LoRaWAN/Sigfox/NB-IoT/LTE-M)

LPWAには複数の通信規格が存在し、それぞれ特徴や用途が異なります。日本国内で広く利用されている主なLPWAの規格は下記のとおりです。

規格名通信方式特徴主な用途
LoRaWAN免許不要の周波数帯を利用した双方向通信国内外で広く普及/独自ネットワーク構築が容易農業、インフラ管理、防災
Sigfox超狭帯域・低消費電力の単方向通信通信モジュールが安価/グローバルネットワーク展開物流トラッキング、資産管理
NB-IoT携帯電話のLTEネットワークを利用安定したカバレッジ/通信事業者が提供スマートメーター、インフラ監視
LTE-MLTE回線のIoT向け拡張規格移動体対応/音声通信・SMSも可能車両管理、ウェアラブル端末

IoTの用途や導入エリア、必要な通信速度や双方向性など、要件に応じて最適なLPWA規格を選定することが重要です。

2. LPWAの強みがわかる!7つの導入メリット

2.1 ① 省電力──電池交換なしで10年使える設計も可能

LPWA(Low Power Wide Area)の最大の特長のひとつは、極めて省電力である点です。

送信出力や通信頻度を最適化した省エネルギーな設計により、ボタン電池1つで長期間運用できるため、頻繁な電池交換やメンテナンスが難しい場所でも安心して設置できます。

現場によっては10年近く電源メンテナンス不要で使える例も珍しくありません。これにより、IoTセンサーや遠隔モニタリング機器の運用コストの大幅な削減が期待できます。

2.2 ② 長距離通信──見通し数十km、障害物にも強い

LPWAは従来のWi-FiやBluetoothに比べ、通信距離が大幅に拡大しています。LoRaWANやSigfoxなどの規格では、見通し環境で数十kmの通信実績があり、都市部でも数kmの通信が可能です。

建物や植生などの障害物に対しても比較的強く、河川や山間部、広大な耕作地を含む多様なフィールドで活用されています。

通信規格理論上の最大通信距離特徴
LoRaWAN約15km(見通し環境)都市部・農村部問わず幅広く利用
Sigfox約50km(郊外)、3〜10km(都市部)少量データを長距離伝送
NB-IoT1〜10kmセルラー網利用で広範囲カバー

2.3 ③ 機器コストが低い──センサー・デバイスを安価に導入

LPWA向けの通信モジュールやセンサーは、シンプルな構成となっているためハードウェアコストが低く抑えられます。

また、アンテナや電源設計も省電力用途に最適化されているため、従来のセルラー通信やWi-Fiと比較して、1ユニットあたりの初期導入コストが大幅に下がります。

これにより、多数の拠点やセンサーを展開したい事業者でも手軽にIoT導入が可能です。

2.4 ④ 通信コストが安い──1端末月額数十円〜のプランも

LPWAは一度に送信できるデータ量が小さいものの、それを活かした低額な通信プランも提供されています。

LoRaWANやSigfoxでは、サービス事業者によっては月額数十円からの通信サービスも登場しており、既存のLTEや3G回線に比べて圧倒的なコストパフォーマンスを実現します。

定期的なデータ送信やアラート用途など、小容量通信の現場では低コストでの運用が可能となります。

2.5 ⑤ 大量接続に強い──センサーの多点設置に最適

LPWAは1つの基地局で同時に多数の機器を接続できる点も大きな強みです。通信プロトコルがシンプルで干渉が少ないため、密集したセンサーネットワークや、農地全体・工場内の広範囲監視など多点設置にも最適です。

デバイスが増えても混線やトラブルが起きにくく、管理面・運用面で大きな負担軽減となります。

2.6 ⑥ 導入が簡単──アンライセンスバンドで免許不要

多くのLPWA規格(LoRaWANやSigfoxなど)は、免許や届出が不要な「アンライセンスバンド(920MHz帯)」を利用しています。

これにより、通信インフラの構築や運用が従来の携帯電話回線や無線局設置に比べて圧倒的に簡単で、管理コストや手続きが大幅に削減可能です。

中小規模の事業者でも自社独自のネットワークを短期間で構築でき、迅速なIoT導入をサポートします。

2.7 ⑦ 多様なIoT用途に対応──農業・物流・社会インフラまで

LPWAは、省電力・長距離・低コストを活かし、農業の遠隔監視やスマートシティのインフラ運用、物流のトレーサビリティ、環境モニタリングなど幅広い業種で活用が進んでいます。

センサーやゲートウェイの種類も多彩で、水位・温湿度・振動・GPS位置情報などさまざまなデータを取得可能です。

これにより、企業は用途や課題に応じた柔軟なIoTシステム構築が行えます。

3.LPWAの導入事例【農業・物流・スマートシティの実践例】

LPWA(Low Power Wide Area)は省電力・長距離通信という特徴を活かし、さまざまな業種や現場で活用が進んでいます。

ここでは国内外で実際に運用されている代表的な導入例を、分野ごとに詳しく紹介します。

3.1 農業×LPWA──水位センサー・遠隔監視で省力化

スマート農業の分野では、LoRaWANやSigfoxなどのLPWAを活用した環境モニタリングソリューションが広まっています。

例えば、水田やビニールハウスに温度・湿度・土壌水分センサーを設置し、インターネット経由でデータを一括監視することで、水やりや換気の自動化、省力化が実現されています。

国内でも、複数のメーカーが提供するIoTセンサーを活用し、水田やため池に設置したセンサーから、水位や気温のデータを遠隔でモニタリングする取り組みが進んでいます。これにより現地の見回り回数が削減され、効率的な営農活動へとつながっています。

3.2 物流・倉庫──温度管理や位置情報で効率化

物流現場では、荷物やパレットに取り付けるLPWA搭載センサーにより、トラックや倉庫内の温度管理、輸送経路の位置追跡といった「トレーサビリティ」を強化できます。

導入先活用例主なLPWA規格
大手宅配業者宅配荷物の位置情報・温度監視NB-IoT、LoRaWAN
物流企業輸送用リターナブル容器の動態管理Sigfox
倉庫管理会社倉庫環境の温湿度データ自動収集LoRaWAN

これらの事例では、データ通信コストの低減やバッテリー交換頻度の削減によって、従来困難だったリアルタイムモニタリングが手軽に実現しています。

3.3 スマートシティ──ごみ収集や街灯の自動制御に活用

地方自治体やインフラ事業者では、LPWAによる社会インフラの遠隔監視・制御が拡大しています。

都市部ではごみ集積所にセンサーを取り付け、満杯情報をLPWAで送信することで、効率的な回収ルートの組み直しが実現しました。

さらに、各地の街路灯に通信機能を持つコントローラーを設置し、LoRaWANやLTE-M経由で照明の自動点灯・消灯や不具合状況の通知を行うプロジェクトも進行中です。

各地で導入が進むスマートシティ基盤と連携し、街路灯やごみ収集など都市インフラの遠隔管理によって、自治体業務の効率化が図られています。

自治体・企業導入内容利用LPWA規格
関西エリアの自治体ごみ集積場の満杯情報自動送信Sigfox
地方都市街灯の遠隔点灯管理・電力消費監視LoRaWAN
電力会社送電網の設備監視センサーLTE-M

このように、LPWAは農業や物流だけでなく、都市インフラやスマートシティを支える重要な通信技術として、多様な現場に導入が進んでいます。

4. LPWAのデメリットと対策ポイント【電波・速度・選定ミスを防ぐ】

4.1 通信速度・帯域は限定的

LPWAは消費電力と通信距離の最適化を重視した無線通信技術のため、データ転送速度や帯域幅はWi-FiやLTEなどと比較して限定的です。

例えば、数kbps〜数百kbps程度の速度が一般的であり、大容量の動画や画像データの送信には適していません。主に定期的なセンサーデータや小容量の情報を送信する用途に向いています。

そのため、リアルタイム性や高頻度・大容量通信が求められるアプリケーションでは、他の通信方式と用途を分けて検討する必要があります。

4.2 屋内や地下では電波到達に注意が必要

LPWAは長距離通信に優れていますが、屋内や地下、ビルの深部など、遮蔽物が多い環境では電波の減衰が大きくなるケースがあります。特に、LoRaWANやSigfoxなどの周波数帯(920MHz帯)は障害物に比較的強いとされていますが、鉄筋コンクリートの建物や地下施設では通信品質が低下する可能性があります。

以下の表は、主なLPWA規格とその電波到達性に関する特徴をまとめたものです。

規格名屋内通信地下・遮蔽物特徴
LoRaWAN比較的強い減衰に注意中継機設置でカバー可能
Sigfoxやや強い要エリア確認固定基地局依存
NB-IoT非常に強い比較的強いキャリア基地局利用
LTE-M強い比較的強い音声通信も対応

現場ごとに電波の到達性を検証し、必要に応じて中継機やアンテナ設置などの対策が求められます。

4.3 規格の選定により通信エリアやサポート範囲が変わる

LPWAは複数の規格(LoRaWAN、Sigfox、NB-IoT、LTE-M)が存在しており、それぞれ対応エリアや導入方法、通信コスト、提供元のサービス体制などに違いがあります。

たとえば、Sigfoxは全国規模の専用基地局による通信網を利用する方式であり、LoRaWANは独自のネットワークを構築できる一方、エリア整備や保守が導入者側の責任となります。

一方、NB-IoTやLTE-Mは携帯電話網を利用した通信規格で、既存インフラを活用できる点が強みですが、提供エリアやサービス仕様は事業者によって異なります。

各規格に対応したデバイスやクラウドとの連携内容、サポート体制にも差があるため、用途・設置場所・運用体制を踏まえて総合的に比較検討することが、導入の成功につながります。

5. LPWA導入を成功させるために──選び方と進め方のポイント

5.1 目的に合った規格の選定(LoRa?NB-IoT?)

LPWA(Low Power Wide Area)は多様な規格が存在しますが、それぞれに特徴と適性があります。

導入目的や利用する場所、ネットワークの範囲、通信頻度やデータ量などを明確に把握した上で、「LoRaWAN」「Sigfox」「NB-IoT」「LTE-M」などから最適な規格を選ぶことが重要です。

規格名概要・特徴主な用途例
LoRaWAN広範囲のカバーエリア・免許不要・独自ネットワーク構築可農業、ビル管理、自治体インフラのモニタリング
Sigfox超低消費電力・グローバル展開・1基地局あたりのカバー範囲が広い遠隔監視、物流トラッキング、スマートメーター
NB-IoTセルラー網利用・高い信頼性・キャリア提供インフラ管理、水道メーター、設備モニタリング
LTE-Mセルラー網利用・保守性高い・移動体にも対応車両管理、ウェアラブルデバイス、遠隔医療

各規格の通信方式やサービス提供エリア、コストなどもあわせて比較検討しましょう。

5.2 導入前のフィールドテストが鍵

実際の運用現場では、事前にフィールドテスト(実証実験)を行うことで、電波の到達状況や通信安定性、消費電力、通信エリアの想定通りのカバーなどを確認できます。

特に、屋内・地下空間や障害物が多い場所での通信テストは必須です。テスト運用によって得たデータを基に、適切な機器配置やバッテリー容量、通信間隔の最適化を行うことが、長期安定運用につながります。

また、導入時だけでなく定期的にメンテナンスや再評価を実施し、現場環境の変化や機器劣化にも柔軟に対応できる体制を整えましょう。

5.3 信頼できるパートナー企業を選ぶには?

LPWAの導入を成功させるには、信頼性の高いパートナー企業選びが非常に重要です。選定時には下記のようなポイントを確認しましょう。

選定ポイントチェック内容
実績同業種・同規模の導入事例が豊富か、過去のプロジェクトでの障害対応実績があるか
サポート体制現地調査やフィールドテストの支援、導入後の保守・運用サポートが充実しているか
技術力無線機器選定やシステム設計、クラウド連携など、技術面の知見・提案力が高いか
パートナー企業ネットワーク通信キャリアやハードウェアメーカーと連携し、適切なエコシステムを持っているか

ベンダーやシステムインテグレーターの選択は、長期間の運用と将来的な拡張性にも大きく関わりますので、価格だけでなく対応力や信頼性も重視しましょう。

6. まとめ|LPWAの利点を最大化するなら、用途に応じた選定がカギ

LPWAは省電力・長距離通信・低コストといった利点を持ち、多様なIoT用途に対応しますが、規格ごとの特徴や通信エリアに差があります。

LoRaWAN、Sigfox、NB-IoT、LTE-Mなどの選択は、用途や設置環境に合わせて見極めることが重要です。最適な規格を選び、事前のフィールドテストを行うことで、導入効果を最大化できます。

貴社の用途に最適なLPWA選定を進めたい方は、技術検証から支援可能なパートナー企業にまず相談するのが得策です。