エッジAIカメラとは?仕組みやクラウドAIカメラとの違い・メリットなどを解説

内部にAIが搭載されているエッジAIカメラは、クラウドAIカメラと何が異なるのでしょうか?そこで本記事では、エッジAIカメラの仕組みやクラウドAIカメラとの違い、活用できる業界(用途)、メリット・デメリットなどを解説します。

エッジAIカメラとは?

エッジAIカメラとは?をイメージする男性が考えている画像

エッジAIカメラとは、内部に搭載されたAIで撮影した映像をリアルタイムに解析するデバイスです。クラウドに依存せず、高速・高精度に解析できるため、セキュリティや製造管理などの分野で導入が進んでいます。ここでは、エッジAIカメラが注目される背景や仕組み、クラウドカメラとの違いを解説します。

エッジAIが注目される背景

エッジAIが注目されている背景には、「高速なデータ処理」と「通信コストの削減」があります。従来のAIシステムでは撮影データをクラウドへ送信し、サーバーで分析しているため、通信に時間がかかりリアルタイム性に欠けるという課題がありました。

エッジAIではカメラやレコーダーなどの端末(エッジ)にAIチップを搭載することで、データを現場で即時に処理できます。クラウドへの通信回数やデータ量を大幅に削減でき、プライバシー保護やセキュリティの強化にもつながるのです。

例えば、工場の製造ラインにエッジAIカメラを導入すれば、異常が発生した場合に数秒以内に検知・アラートを出せます。つまり、エッジAIは、「スピード」と「経済性」を両立する技術として注目されているのです。

エッジAIカメラの仕組み

エッジAIカメラは、カメラやレコーダーなどの端末に搭載されたプロセッサ(CPU・GPU・専用AIチップ)が映像をリアルタイムに解析する仕組みです。撮影した映像を一度クラウドに送信することなく、端末内で人物検知や物体認識、動作分析を行えます。

例えば、エッジAIが映像内の人物の動きを解析し、不審な行動や転倒などを瞬時に検知することが可能です。ネットワークが不安定な環境でも安定して動作できるため、クラウド処理に比べて大幅に遅延を減らせます。

また、処理対象データが外部に送られないため、個人情報漏洩のリスクを抑えられます。エッジAIカメラは「撮影」と「解析」を一体化することで、現場で即座に意思決定を行える仕組みを実現しています。

クラウドAIカメラとの違い

エッジAIカメラとクラウドAIカメラには、ネットワーク環境やデータ処理、セキュリティ性、コストなどの違いがあります。

AIカメラの種類エッジAIカメラクラウドAIカメラ
ネットワーク環境オフライン環境でも動作できる高速インターネット環境が必要になる
データ処理の場所端末(エッジ)クラウドサーバ
データ処理の速度ネットワーク環境に依存せず、即時に処理できるネットワーク障害によって、遅延が発生する
セキュリティ性データ漏洩のリスクを軽減できるデータ漏洩のリスクがある
コスト初期費用は高いが、維持費を抑えやすい初期費用は安いが、維持費が高くなる

「広範囲のデータを一か所にまとめて処理・管理したい企業」に向いているクラウドAIカメラに対して、エッジAIカメラは「各現場でデータを即時に処理して判断・対応したい企業」に適しています。

エッジAIカメラを活用できる業界(用途)

工場の製造ラインでロボットが作業している画像

エッジAIカメラは、さまざまな業界の幅広い用途に活用されています。具体的には製造・小売・建設・物流といった業界で、人手不足の解消や安全性の向上、業務の効率化などに貢献しています。

製造業(異常検知・品質検査)

製造業では、エッジAIカメラが製造ラインの「異常検知」や「品質検査」などに活用されています。人間の目視では見逃す微細な変化でもリアルタイムで検知できる点が、エッジAIカメラの特徴です。

例えば、製品にキズや欠けが発生した瞬間をエッジAIが検知して、ラインを自動停止させることで不良品の流出を防止できます。また、機械の温度や動作音の変化をエッジAIが検知し、故障の予兆を把握することも可能です。

品質の安定と製造の効率化が両立できるため、「目視検査の自動化」「作業員の負担軽減」「ダウンタイムの削減」に大きく寄与します。製造現場におけるスマートファクトリー化の第一歩として、エッジAIカメラを導入できるのです。

小売業(顧客分析・万引き防止)

小売業では、エッジAIカメラが「顧客行動の分析」や「万引き防止」などに役立っています。エッジAIが顧客の動線や滞在時間を解析することで、人気商品や混雑エリアを把握し、売り場レイアウトの改善に活かせます

さらに、エッジAIが不審な動きをリアルタイムで検出することで、万引きの未然防止にも効果を発揮します。クラウド処理に頼らずカメラ本体で解析できるため、通信環境に左右されず安定して運用できる点が強みです。

そのほか、来店者の年齢層や性別の分析にも利用され、マーケティング戦略や販促施策の改善にもつながっています。データは匿名化処理されるため、プライバシー面でも安心して導入できる仕組みです。

建設業(安全確保・入退場管理)

建設業では、「安全確保」や「入退場管理」などのためにエッジAIカメラが活用されています。作業員のヘルメット未着用や危険区域への立ち入りをエッジAIが即座に検知し、警告を出すシステムです。

また、出入りする作業員をエッジAIが自動で識別し、入退場の管理を効率化できます。手作業による入退場の記録や確認の手間が減り、労務管理の正確性が高まります。さらに、転倒や事故などの異常をリアルタイムで検知すれば、迅速な救助が可能です。

通信環境が不安定な建設現場でも、エッジAIカメラならクラウドを介さずに動作するため、安定して運用できます。

物流業(車両監視・混雑解析)

物流業では、「車両監視」や「混雑分析」などにエッジAIカメラが導入されています。フォークリフトの動線や従業員の動きをエッジAIがリアルタイムに監視し、接触事故を未然に防ぐ仕組みです。

また、出荷エリアや駐車場の混雑状況を自動解析することで、配送ルートや作業スケジュールの最適化も可能です。クラウド通信に依存しないため、ネットワークの負荷を気にせず現場単位で運用できます。

エッジAIによる車両ナンバーの認識や荷物の識別なども行えるため、物流の「可視化」と「省人化」が同時に進みます。結果として、安全で効率的な物流現場の実現に大きく貢献できるのです。

エッジAIカメラのメリット・デメリット

メリット、デメリットをイメージした画像

エッジAIカメラにはクラウドAIカメラにはないメリットがありますが、導入時に注意したいデメリットもあります。ここでは、導入前に知っておきたい主なメリットとデメリットを分かりやすく解説します。

エッジAIカメラのメリット

エッジAIカメラのメリットは、「リアルタイム処理」「セキュリティ性の高さ」「オフライン環境の対応」「通信費の削減」などです。撮影データをクラウドに送らず、現場でエッジAIが解析するため、処理の遅延が少なく、個人情報保護にも優れています。

また、インターネット環境に依存しない仕組みのため、オフライン環境でも動作可能です。工場や建設現場などのネットワーク環境が不安定な場所でも、映像解析を中断せずに行えます。常時映像をクラウドに送信しないためデータ通信量が少なく、長期運用でもコストを削減できます。

エッジAIカメラは、「速さ」「安全性」「利便性」「経済性」の高い現場向けの実用的なAIカメラです。

エッジAIカメラのデメリット

エッジAIカメラには、いくつかのデメリットもあります。具体的には、「初期費用の高さ」や「処理性能の制限」などです。AIチップや高性能プロセッサを内蔵しているため、一般的な監視カメラに比べて価格が高めに設定されています。

また、カメラ本体で処理を行うため、クラウドAIカメラと比べてAIモデルの更新や機能追加が制限されることがあります。新しいアルゴリズムを導入する際には、ファームウェア更新や機器の交換が必要になるケースもあるのです。

ただし、「クラウド連携型のエッジAIカメラ」を採用することで、上記のデメリットを対策できます。クラウドの柔軟性とエッジの即時性を組み合わせることで、性能とコストのバランスを図ることが可能です。

エッジAIカメラに関するよくある質問

「よくあるご質問」という文章を書き込んだホワイトボードの画像

初めてエッジAIカメラの導入を検討する際には、選び方や費用負担などの不安を感じるものです。ここでは、エッジAIカメラの導入に関するよくある質問を集めましたので、回答をご紹介します。

エッジAIカメラをどのように選べばよいですか?

エッジAIカメラを選ぶ際は、「設置する環境」「データ解析の内容」「処理の速度」の3点を確認することが重要です。設置する環境によって、エッジAIカメラの要件は変わります。屋外設置では防水・防塵機能が求められ、夜間監視には赤外線対応モデルが適しています。

また、導入現場によってデータ解析の内容が異なるため、適したAIモデルも異なります。例えば、工場では異常検知や稼働監視に対応するモデルが適し、小売店では行動分析や万引き防止などに強いモデルが効果的です。

そして、演算処理を端末(エッジ)で行うため、CPUやGPUもしくはAIチップの性能によって解析スピードが変わります。リアルタイム性が求められる現場では、AIチップを搭載した高性能モデルが適しています。

エッジAIカメラの導入に補助金を活用できますか?

はい、エッジAIカメラの導入には国や自治体の補助金を活用できる場合があります。代表的な制度は、「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」などです(※)。

エッジAIカメラがDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や業務効率化などに貢献する設備として認められる場合に、補助金が支給されます。支給額は制度によって異なりますが、必要経費の30~50%程度です。

申請の条件や期限が定められていますので、導入を検討する際は早めに確認しておくことが重要です。補助金を活用することで、導入のハードルを下げることができます。

※参照元:

IT導入補助金制度2025「IT導入補助金制度概要」(https://it-shien.smrj.go.jp/about/)

ものづくり補助金「トップページ」(https://portal.monodukuri-hojo.jp/)

エッジAIカメラの導入について相談しよう!

エッジAIカメラは、人手不足解消や事故防止など、さまざまな現場の多様な課題を解決するデバイスです。導入の目的を明確にし専門業者に相談することで、最適な機種の選定と効率的な運用を実現しましょう。

三信電気株式会社では、高解像度エッジAIカメラや小型エッジAIカメラの導入や運用をご支援しています。

お客様の課題を解決できる機種の選定や導入の方法をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。