
はじめに
こんにちは!三信ブログ部のMUDO📿です。
近年、IoTデバイスを用いた環境センシングや人の行動可視化が広く行われています。特に、オフィスや公共施設におけるトイレ利用状況の把握は、利用者の利便性向上や混雑緩和、さらには清掃の効率化にもつながる重要なテーマです。しかし、既存のソリューションは高価であったり、設置工事が必要で導入ハードルが高いケースも少なくありません。
そこで今回は、比較的安価で導入が容易なMinew社のドアセンサとMG5ゲートウェイを利用し、トイレの使用状況を可視化するPoC(概念実証)を行いました。本記事では、その仕組みや実装手順、得られた知見を紹介します。
背景と目的
トイレ利用状況をリアルタイムに把握できれば、以下のような利点があります。
- 利用者側の利便性向上
どの個室が空いているかをスマホやサイネージで確認でき、無駄な待ち時間を減らせる。 - 運営側の管理効率化
清掃や点検のタイミングをデータに基づいて判断でき、過剰/不足な清掃を防げる。 - データ活用の可能性
時間帯別の利用傾向を把握し、施設設計や運営改善に役立てられる。
ただし、こうした仕組みを既存の建物に導入するには「設置が容易」「電源工事が不要」「コストが安い」という要件が重要になります。今回用いたMinewのドアセンサは電池駆動で、MG5を通じてクラウドにデータを送信できるため、PoCには最適と判断しました。
実験に用いた機材
- Minew ドアセンサ(モデル:S4)
ドアの開閉を検知し、BLE信号として送信するセンサ。電池で長期間駆動可能。 - Minew MG5 ゲートウェイ
BLEデバイスからのデータを受信し、LTE経由でクラウドに送信するゲートウェイ。 - クラウド環境
今回はPoCのため、簡易的にAWSのS3を使ってOpen/Closeが判別できるログを格納。

ドアセンサ(Minew S4)
Minew社のスマートホンアプリでも開閉状態が確認出来ます。

MG5
実装の流れ
- センサの設置
- 個室のドア上部にドアセンサを設置。開閉時に信号が送出されるようにする。
- ゲートウェイ設定
- MG5をLTEに接続し、クラウド側のMQTTブローカにデータを転送するよう設定。
- データ処理
- 受信した開閉情報を時系列データとして蓄積。
- 可視化
- AWSのS3を用いて開閉状態のログで利用状況を可視化。

ドアセンサをトイレに設置

AWS S3の開閉ログ
可視化の結果
PoCの実施により、以下のような可視化が可能になりました。
- リアルタイム状況表示
現在の個室ごとの利用状態を遠隔で確認できる。
→ サイネージやWeb UIに表示れば、ユーザーは入る前に空き状況を把握可能。 - 時間帯別利用傾向
例えば「午前10〜11時」「昼休み直後」「夕方退勤前」など、利用が集中する時間帯を明確することもできます。 - 滞在時間の統計
平均利用時間や、異常に長い利用があった場合の検知も可能であることがわかった。
課題と考察
実証を進める中で、いくつかの課題も見えてきました。
- センサ検知の精度
ドアの閉まり具合が不完全だと「利用中」と誤判定されるケースがある。
→ 磁石の設置位置調整や、ドア閉鎖の閾値設定が重要。 - 通信安定性
MG5がLTE経由でクラウドに送信するため、ネットワークが不安定な環境ではデータ欠損が発生する可能性。
→ バッファリング機能やローカルログ保存を組み合わせると信頼性が高まる。 - プライバシーへの配慮
個別の利用者を特定しない仕組みにする必要がある。今回はドア開閉のみに限定し、人の識別は行わない構成なのでクリア。
今後の展望
PoCを通じて、MinewのセンサとMG5を組み合わせれば、低コストかつ簡易にトイレ利用状況を可視化できることが確認できました。今後は以下の発展が考えられます。
- 利用者向けアプリやサイネージ連携
トイレの混雑状況をリアルタイムに表示し、ユーザーの利便性をさらに高める。 - 清掃管理との連携
一定回数利用されたら清掃通知を出すなど、運営サイドの効率化を支援。 - 他センサとの組み合わせ
CO₂濃度や人感センサと組み合わせ、混雑感や利用環境を多角的に可視化する。
まとめ
本記事では、MinewのドアセンサとMG5を用いてトイレ利用状況の可視化を試みたPoCについて紹介しました。実際の運用には課題も残りますが、工事不要・低コストで導入できる点は大きなメリットです。
Minewのセンサ、ゲートウェイをご要望の際は当社にお問い合わせください。